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表紙によせて

 植物を見聞していくなかで、各種の特徴や分布を調べるうちに、とくに深く興味を持つようになるグループが現れてきます。わたしでいえば、スミレ科アザミ属トリカブト属などがそうで、種数が多く、分布にも特徴がある場合が多いように感じます。こうした種類については、ほかにもネコノメソウ属のファンであれば「ネコノミスト」、そしてコバイモ亜属のファンなら「コバイモイアン」などが存在し、敬意と愛情をもってそう呼ばれているようです。

 コバイモについては、わたしもご多聞に漏れずで、日本に分布するコバイモをいちどはすべて見よう、とあちこちに出向きました。トクシマコバイモで最後かと思っていたところ、九州に分布するトサコバイモは、花被片の模様のちがいから、2016年に新種のヒゴコバイモとして記載されたと知り、長崎在住のうちに観察を計画していたものの、かなわないままの転居となりました。

 今回ようやく、まだ早春ということで、ヒゴコバイモだけを目当てに阿蘇を4年ぶりに訪ねました。木漏れ陽の樹林下に点在するヒゴコバイモは、暖冬とあって開花が早く、やや遅めでしたが、鐘のような白い花を咲かせているのを目にできました。この日は午後、福岡県でホソバナコバイモも観察でき、一日のうちに両種のちがいをしっかり確認する機会を得ました。
           (2023.3.19 熊本県阿蘇)

○野生植物写真館「ヒゴコバイモ」
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