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尾瀬については、植物観察をはじめた当初から足しげく通い、主だった植物を見てきたこともあり、最近はジョウシュウトリカブトのような未見の植物の確認で出向くくらいでした。ところが当時、リバーサルフィルムで撮った写真が色褪せたり、デジタルデータで保存できなくなったりして、いずれ撮り直しに行きたいと思っていました。 この年は梅雨入りしても雨が少なく、週末に晴れるという天気予報に接したことで、「今こそ」とひさしぶりに至仏山へと向かいました。鳩待峠から山の鼻に下り、東面登山道から山頂を目指しましたが、至仏山は14年ぶり、このルートを登るのはなんと27年ぶりです。中腹で高木はなくなって蛇紋岩の露頭が続き、この山ならではのホソバヒナウスユキソウ、ジョウシュウアズマギクといった植物がつぎつぎに現れたものの、思っていた以上に咲き進んでいて、やっと見つかったクモイイカリソウはもう、花が散りはじめていました。 気落ちしながらも、ゆるやかな斜面の砂礫地が広がる「高天ヶ原」を過ぎ、山頂に近づくにつれ、急に季節が逆戻りし、湿った草地ではショウジョウバカマが咲いたばかり、どうやら遅くまで残雪があったらしく、「これならあるいは」と登っていくと、みずみずしい花をつけたクモイイカリソウがようやく現れました。 クモイイカリソウはキバナイカリソウが蛇紋岩地で変性したものとされ、花じたいは母種と変わらないものの、草丈は低く、花序は葉よりも上につくとともに、葉の周囲が赤褐色に縁どられ、トゲ状の毛がないのが特徴です。この変種を母種と区別しない見解もありますが、至仏山ならではの植物は1つでも多いほうがうれしいものです。 (2025.7.6 群馬県至仏山) ○野生植物写真館「クモイイカリソウ」へ ○「表紙によせて」バックナンバー |