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高山植物は数あれど、ラン科を代表するものといえばハクサンチドリで決まりでしょう。北アメリカのアラスカ、アリューシャン列島、千島列島、樺太から中国大陸東部や朝鮮半島まで寒冷地に広く分布し、国内では白山を西限に北海道と本州の高山などから知られ、独立峰で比較的最近、現在の山容になった富士山のような山をのぞけば、火山性の山も含めて、わたしが訪ねたほとんどの高山で見たように思います。 本州中部では標高2,500mくらいから見られるハクサンチドリですが、東北では標高1千mちょっとで現れ、北海道に至っては原野や海岸べりの草地でもふつうに生えるようになります。湿りけのある草地が本来のすみかなのでしょうが、風衝草原や岩場の草つきでは、花数の少ないコンパクトな草姿となり、また、蔵王の御田の神や尾瀬ヶ原のような開けた湿原では、たくさんの花をつけた高さ50cm以上のものもあります。ハクサンチドリの花色は紅紫色が基本で、高山のものは色が濃く、湿原に生えるものは薄めのものが多いように感じます。運がよければ、シロバナハクサンチドリや、葉に褐色の小さな斑紋が散らばったウズラバハクサンチドリが見つかるかもしれません。 この年の梅雨入り直前に、民謡で「宝の山」と謡われた会津地方の磐梯山を初めて訪ねたところ、稜線の爆裂火口の縁を進む登山道で出会ったハクサンチドリは、花色が濃いのに花の数も多くつき、20本もの花序を上げていて、これまででいちばん豪勢な大株でした。 (2024.6.22 福島県磐梯山) ○野生植物写真館「ハクサンチドリ」へ ○「表紙によせて」バックナンバー |