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表紙によせて

 日本有数の温泉地である箱根は、芦ノ湖を囲むように1千m級の山々が外輪山となって連なる登山エリアでもあります。最高峰となる神山(標高1,438m)は、大涌谷からの火山ガス発生や台風による登山道荒廃で、10年以上にわたって立入禁止だったのですが、この春、ようやく登山可能となったとのこと、そろそろ行かないと花の季節が終わってしまうと、18年ぶりに足を向けることにしました。
 楽に山上に上がれる駒ヶ岳ロープウェイは最近、値上げしたうえに9時運行開始と遅いのでパスし、防ヶ沢登山口に車を停めてスタートしました。登りはじめは日が陰っていたので、写真を撮らずに防ヶ沢分岐までさっさと進み、左折して山頂を目指してさらに登ると、前の週、山麓では蕾ばかりだったヤマトリカブトが早くも満開となって次々現れました。
 全国各地にさまざまな種類が分布し、識別がむずかしいことで知られるトリカブト属にあって、一般向けの植物図鑑に必ず掲載されるヤマトリカブトですが、じつは分布はさほど広くなく、関東〜愛知県の太平洋側に限られています。箱根では主に樹林下に生えるほか、箱根駒ヶ岳などの風衝草原のものは直立して草丈が低いことから、ハコネトリカブトとして区別される場合もあります。
 世界最強ともいわれる有毒植物として知名度が高く、秋の山で目にする機会が多いわりには、意外なほどに登山者には知られておらず、ヤマトリカブトを撮影していると名前を聞かれることがあり、トリカブトと伝えると、身近に生えることにビックリされることもしばしばです。

         (2025.9.23 神奈川県神山)

○野生植物写真館「ヤマトリカブト」
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