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表紙によせて

 早池峰山は、固有種やそれに近い植物の種類が多い上にその数も多いという点では、よく似た特徴を持つ尾瀬の至仏山にひけをとりません。また、日帰りで登山が可能というところも共通しています。至仏山にくらべると訪れる人が少ないのは、やはり「尾瀬」ほどのネームバリューがなく、大都市圏から遠いことが大きな理由でしょうが、早池峰山の植物にとってはむしろ幸いなのかもしれません。

 日本を代表する花の名山といえる早池峰山ですが、この山を特徴づける植物を見ようと思えば、ヒメコザクラナンブイヌナズナなど春一番の花が咲く6月、この山の名を冠したハヤチネウスユキソウが満開となる7月、そしてナンブトウウチソウナンブトラノオが赤い花穂を風にゆらす8月と、少なくとも3回は足を運ぶ必要があります。

 ナンブトウウチソウは近縁のワレモコウと異なって、おしべを長くのばした大きな花穂をたれ下げるので、ずっと見ばえがします。じっさい、この仲間には「サングイソルバ」の名前で園芸植物として利用されるものもありますが、ナンブトウウチソウの場合は、レッドデータブックで絶滅危惧TA類と、絶滅の危険性がきわめて高いとされており、観賞するのは山の上だけにとどめておきたいものです。

         (2005.8.17 岩手県早池峰山)

○野生植物図鑑「ナンブトウウチソウ」
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