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表紙によせて

 センダイタイゲキの分布の中心は東北〜関東北部ということで、「那須地方なら見つかるだろう」と、以前、シロヤシオなどとあわせて軽い気持ちで出向いたものの、観察できずじまいだったことがあります。最近明らかになった神奈川県の自生地は立ち入れないようなので、茨城県まで足を向けてみることにしました。

 ゆるやかな斜面のある落葉樹林下を進むにつれ、ジュウニヒトエアマドコロ、スミレ類が現れ、林床は適度に管理されてササ藪にならずに多様な自然環境が保たれているのを実感できます。やがてセンダイタイゲキの群生地が現れました。ノウルシオゼヌマタイゲキなど、根茎で広がって群落をつくる近縁種に負けず劣らずのみごとな規模に思えます。

 文献情報からは、ナツトウダイと区別しにくいかもという懸念もありましたが、腺体の形の違い以外にも、苞葉はナツトウダイより小さくて目立たず、また、咲きはじめは全体に赤っぽくて、やはり春咲きのマルミノウルシを連想します。

 好適な環境であればこのように群生するセンダイタイゲキなのに、関東地方では希少種なのはナゾですが、想像をたくましくすると、本来は東北地方にしか分布せず、渡り鳥によって関東地方まで種子がもたらされ、運よく定着できたところが自生地として発見されたということかもしれません。

            (2022.4.20 茨城県)

○野生植物写真館「センダイタイゲキ」
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