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表紙によせて

 東京の都心部は一般に思われている以上に緑が多く、高層ビルから見おろすと、皇居をはじめ、新宿御苑や有栖川宮記念公園など、たくさんの公園が点在していることがわかります。これは、江戸時代の各藩邸が明治時代以降に払い下げられて、公園として再整備されたことと関係があり、ふるくは関東地方の平野部をおおっていたとされる照葉樹林のおもかげを今にのこしています。日比谷公園もそのひとつで、皇居と霞ヶ関中央官庁街や帝国ホテルに囲まれるように位置する、広さ約16haの都立公園です。園内には洋式庭園や緑の相談所が整備され、平日の昼休みは会社勤めの人たちでにぎわいます。

 日比谷公園は、帰化植物を中心として、私が植物観察のフィールドとしている場所のひとつですが、在来の植物も意外と多く、ヘビイチゴ類やキランソウなども見ることができます。スミレの仲間ではタチツボスミレスミレヒメスミレコスミレを確認していましたが、この年、園内の一角にアリアケスミレが生えているのにようやく気づきました。アリアケスミレは田んぼのまわりなど人里で見られるスミレですが、日比谷公園のものはおそらく花壇に植えられた花木類とともに種子が持ちこまれたものでしょう。さいわいに住みやすい環境を得て、みごとな群落となっていました。

         (2004.4.14 東京都千代田区)

○野生植物図鑑「アリアケスミレ」
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