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表紙によせて

 長野県の山を歩くのは4年ぶりのこと、県南部まで足を伸ばすのはツツザキヤマジノギクを観察して以来ですから、じつに7年ぶりとなりました。この日は朝から好天に恵まれ、山頂近くの展望台からは遠く、うっすらと冠雪した中央アルプスも望めました。紅や黄に色づきはじめた木々をながめつつ、林道を進むうちに現れたのがホソバノツルリンドウです。

 ホソバノツルリンドウは、山地に生えるリンドウ科の植物としては希少な種類の1つで、なかなか目にする機会がありませんでした。数年前からここを訪ねようと思いながらも、長崎県への転居でおあずけとなっていて、今回も、当初の予定日が大雨で延期せざるを得ず、花の盛りからは遅くなってしまったかも、と不安になりながらの訪問でした。

 ところが1株見つかってホッとしたのもつかの間、ここは環境がよいのか、林道わきのススキやササにからみついた、満開のホソバツルリンドウが次々と現れ、なかには鈴なりに花を垂れ下げたものもあって、あるところにはあるもんだとビックリしました。登山者もまれなこの山で、いつまでも咲きつづけることを願うばかりです。

           (2020.10.25 長野県)

○野生植物写真館「ホソバノツルリンドウ」
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