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表紙によせて

 長崎に転居した年は、不案内の地ということもあり、県外での植物観察は阿蘇で精いっぱいでしたが、2年目は、冬のうちにじっくり下調べを行い、春から九州各地に出向く計画を練ることができました。4月とは思えない発達した低気圧が九州を通過した翌日、この地域ならではの花を求め、大分県でシオミイカリソウ、宮崎県でツクシアケボノツツジを観察したあと、熊本県まで南下しました。

 国内で11種が知られ、地域ごとにさまざまな種類が分布するチャルメルソウ属ですが、筑波実験植物園の奥山雄大さんの論文によると、熊本県には5種が分布し、九州随一とのことです。人も車も見かけない山奥の渓流沿いで車を止めて分け入ると、ここで2種のチャルメルソウを観察する機会を得ました。

 ツクシチャルメルソウは数が多く、苔むした渓流のあちこちで花序をのばしていて、ほかにもシロバナネコノメイワネコノメソウが咲き、さながらユキノシタ科の楽園のようです。さらに足を進めるうちに「おやっ」と思わせるチャルメルソウが現れました。ツクシチャルメルソウよりも全体に大柄で、花弁は茶色く、7裂しており、トサノチャルメルソウと似ています。どうやらこれが同論文で「クマチャルメルソウ(球磨哨吶草)」と呼ばれるチャルメルソウと見当がつきました(写真は正確には、ツクシチャルメルソウとの交雑個体(奥山氏の私信による))。帰路ではミヤコアオイコミヤマスミレも現れ、その豊かな植物相のおかげで充実した一日となりました。
           (2018.4.15 熊本県)

○野生植物写真館「クマチャルメルソウ」
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