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植物に出会うために


1 植物に出会うために
 
 わたしがどのようにして植物に出会い、写真撮影をしているか、簡単に紹介したいと思います。植物ウオッチングをされる方の参考となればさいわいです。


(1)情報収集
 
 見てみたい植物があるとき、まず情報収集を行います。その植物に出会えるかどうかは、8割方これで決まります。できるだけ多くの情報を集めて検討することが重要です。
ア 出版物
 植物図鑑、写真がメインの携帯サイズの植物ガイドなど。なかでも掲載写真の撮影場所・日付の記載があるものがおすすめです。山域によっては、その山で見られる植物を網羅的に掲載した本も出ています。北海道新聞、信濃毎日新聞など地方の新聞社がこういった本の出版に積極的です。
 
 また、大学図書館等においてある植物学関係のアブストラクト(論文の要約リスト)を活用して、学術論文に当たる方法もあります。

ベニバナヒメイワカガミ
 
 参考までに、おすすめの出版物を次に紹介します。また、わたしがよく使う出版物については、その一部を「参考文献」に整理してありますので、ご参照ください。
○山渓フィールドブックス「春の野草」「夏の野草」「秋の野草」 (永田芳男、山と渓谷社、1991)
 わたしが植物写真を撮りはじめた頃に出版された本です。初心者のわたしは、この本で箱根のベニバナヒメイワカガミや福島県南郷村のヒメサユリなどの情報を得ることができ、現地に見にいくことができました。とっても感謝している本です。
 
日本列島花Map 
(全18巻、北隆館、1992〜1995)
 北海道、東北・・・と地域別に花の名所を紹介しています。類似の出版物は他にもありますが、このシリーズでは原則として野生の植物を対象としているのが特徴です。タシロランなどはこの本から情報を得ました。また、「ノギク」「サクラソウ」「スミレ」など、植物のグループごとにまとめた別冊もあります。
 
野の植物誌、山の植物誌 (解説 大場達之、写真 平野隆久・熊田達夫・巽英明・木原浩、山と渓谷社、2000)
 この本の旧版である「フィールド百花 野の花」「フィールド百花 山の花」(各全3巻、山と渓谷社)を初めてみたのは、地元の市立図書館でした。当時すでに絶版となっていて、結局神田の古書店で購入したのですが、最近、装丁も新たに出版されたのはうれしい限りです。
 
日本帰化植物写真図鑑 (編・著 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七、全国農村教育協会、2001)
 最近出版されたばかりの写真図鑑です。帰化植物は消長が著しく、出版物に掲載されている種類にも限りがあるのですが、この本は帰化植物に限定しているだけあって、たくさんの種類が掲載されています。雑草防除を専門とする農林水産省の研究機関の研究者の手による本です。

イ インターネット
 
 最近では、各種検索エンジンを活用した情報収集も有効となってきました。個人のHPのほか、地方自治体や新聞社などが地元の花の名所を紹介していることも多く、例えば鹿児島県頴娃町のキイレツチトリモチ、笠沙町のサツマノギクなどあまり出版物では知られていない情報が入手できることもあります。

ウ 口コミ
 
 その植物の情報を知っている方を探して教えてもらう方法です。確実な情報を得ることができますが、このような問い合わせをする人の中には悪質な人間もいる可能性があるので、個人的に信用してもらえないとなかなか難しいかも知れません。


(2)調査・取材
 目的地が決まったら、その植物について事前調査します。形態的特徴はもちろんのこと、生育環境なども把握することが、現地でその植物を見つける際のポイントとなります。特に、あまり目立たないめずらしい植物については、十分なリサーチが必要です。また、開花期も重要です。たいていの花のベストの時期は1週間から10日間程度ですので、取材日は収集した情報を参考に慎重に検討します。なお、花の撮影には、満開時よりも7〜8分咲きの方が枯れた花が少なく、見栄えがよいようです。
 
 ここまで準備が終わったら、いよいよ現地取材です。有名な群生地や個体数が多い場合は問題なく見つかることが多いのですが、希少種など個体数が少ない植物も多いので、現地では十分な時間を確保してできるだけくまなく探しましょう。ただし、当然のことですが、国立公園内など登山道以外への立入が禁止されているところへは絶対入ってはいけません。出版物の中にも、そのようなところで撮影したと思われる写真があるのは残念なことです。事前に調査した形態的特徴、生育環境などを念頭に置いて、生育していそうなところは特によく調査します。
ヒメサユリ
 
 写真撮影する植物を見つけたら、まずはよくその植物を観察し、名前がわからない場合はそれから調べるようにします。慣れてくれば、初めてみる植物でも分布などからだいたいの推測ができるようになります。本当は標本を採集するのが確実なのですが、わたしは、あとから訪れた人もその植物を見ることができるよう、できるだけ特徴を覚えて(必要があれば拡大写真を撮って)すませるようにしています。また、同定できなかった植物は、帰宅後や写真現像後に、すぐに図鑑などで確認するくせをつけることが大切です。
 
 植物写真の撮り方の詳細については他の専門書にゆずりますが、雄しべ、唇弁など花のポイントとなる部分にピントが合っていること、ブレないことが、植物写真を撮る上での最低限の条件です。そのためにも撮影には十分な時間をとりたいものです(自分自身への反省を含めて・・・)。また、その個体の最も見栄えのするアングルを注意深く探ることもポイントとなります。なお、撮影するときは花ばかりに目を向けがちですが、写真ができたあとに後悔しないよう、作品として見たときに明らかに好ましくないもの(例えば写真を二つに分けてしまう枯れ枝)は除くなど、植物以外の周辺部分にも注意を払いましょう。この点は実は私自身にとっても今後の課題です。
 
 なお、撮影に夢中になるあまり、周辺を踏みつけてしまうといったことのないよう、十分に配慮が必要です。花は自分のためだけに咲いているのではありません。時おり、先に撮影した人の踏みつけあとが見られるのは残念なことです。
 
 わたしが植物に出会うことができて特にうれしいのは、
 ア 全く現地情報なしに自分なりに分布、生育環境などを分析してねらいを定めた場所で、目的とする植物を発見できたとき、
 イ 市町村又は山域レベルの情報をもとに訪れた場所で、目的の植物を発見できたとき、
 ウ 全く予想していなかった植物に偶然出会えたとき、
といったときでしょうか。
 
 以上、かなり用意周到な植物の探し方の紹介となってしまいましたが、あまり目的にしばられることなく、カメラ片手に自由に山や野を散策するのも楽しいものです。思いもかけなかった出会いもあります。
 
 さあ、フィールドへ出かけましょう!


2 使用機材等について
 
○ カメラ
   Canon EOS1000、EOS55、EOS5DmarkU  Nikon FM2
○ レンズ
   Canon 100mmマクロ、28-105mmズーム、200mm望遠
   Nikon 35-105mmズーム 
   Tamron 90mmマクロ、28-105mmズーム
○ 三脚
   ジッツオ
○ フィルム
   FUJICHROME RDP、RDPU、RDPV、RVP F
○ 掲載写真
 このホームページに掲載している写真は、すべてHP管理者が撮影したオリジナルの写真です。

タシロラン

3 このHPに掲載している植物の撮影地のあつかいについて

 
 このホームページでは、掲載している植物に関する情報として、撮影日と撮影地を記載しています。これらはその植物写真の基礎データとしての役割があるほか、植物に関心のある方が実際にその植物を観察したり、撮影したいと思ったときの手助けになればと思っているためです。
 
 一方、掲載している植物には、「種の保存法」に基づき「特定国内希少野生動植物種」に指定されているキタダケソウや、「環境省レッドデータブック」に掲載されている植物をはじめ、さまざまな要因により絶滅のおそれがあるものが多くあり、これらの生育地については慎重なあつかいが必要と考えています。このホームページの情報により今まで知られていなかった生育地が明らかとなり、心ない人たちの手によってこれらの希少な植物がその存在をおびやかされてしまうことは避けなければなりません。 
 このような考え方により、このホームページに掲載する植物の撮影地については、原則として、都道府県名及び市町村名(または山域名)までにとどめ、さしつかえないと判断できる場合にかぎって、より具体的な場所を本文中で示すこととしています。
 
 なお、図鑑など出版物ですでに紹介されている生育地については、公にされている情報と整理できることから、このホームページであえて撮影地を明らかにしない必要性は低いというのが基本的な考えですが、出版物で紹介されていない生育地も含め、個別に必要と判断する場合は都道府県名のみの記載とし、希少な植物の保護に配慮しています(ミコシギクイソスミレなど)。
 
 日本の野生植物たちを守っていくため、以上のことについて、どうぞご理解をいただければと思います。

キタダケソウ

4 主な作品掲載書籍など
 
高山の花(学習研究社、2007)
山の花(学習研究社、2008)
里の花(学習研究社、2009)
日本の野草 秋(学習研究社、2010)
大切にしたい野生生物 〜新潟市レッドデータブック〜(新潟市、2010)
葛巻町第9回俳句コンテストパンフレット(葛巻町、2010)
高等学校用文部科学省検定教科書『国語総合D』(三省堂、2012)
野山の花(学習研究社、2012)


5 HP管理者のプロフィール

 
 氏名 宮本 亮 (みやもと りょう)
 1967年東京都生まれ、東京農工大学大学院農学研究科修士課程修了(専攻:園芸学
 大学時代のサークル「植物研究会」への加入をきっかけに、野生植物の観察、写真撮影を始める
 趣味は、植物の観察、写真撮影のほか、登山、スキー、日本産淡水魚の飼育など
 1年7ヶ月間の石川県在住、15年間の神奈川県在住、3年間の長崎県在住、3年間の神奈川県在住を経て、現在、宮城県に在住
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