Home > 表紙によせて > 表紙によせて(2021.11〜2022.1)





表紙によせて

 湘南海岸は神奈川県内でも屈指の観光地で、季節を問わず人も車も多く、足を向けるのには躊躇してしまうのですが、メインルートからちょっと外れたところはぐっと静かになり、海浜植物の観察に向いたエリアもあります。この年の夏は、新型コロナウイルス感染症の拡大により緊急事態宣言が発令された影響で、遠出を控えて県内の植物観察に力を入れることにしました。

 マルバアカザを撮影しようと出向いた8月の湘南海岸では、クロマツ林から砂浜に下りたあたりで、ウンランが肉厚で緑白色の葉を広げているのに気づきましたが、花をつけるのはまだまだ先のようで、再訪を期することにしました。

 そろそろ満開になるだろうと出かけたのは10月に入ってから、希少種ということもあり、日中を避けて朝のうちに現地を散策すると、うれしいことに思った以上に多くの株が花を開いていました。まわりは釣りやサーフィンに興じる地元の人ばかりで、撮影していても、ウンランに目を向ける人はいません。

 ウンランの花を見るのは、以前、観光がてら寄り道した8月の石川県以来、じつに28年ぶりでしたが、ここでは花期はずっと遅く、サイズもコンパクトで、地域によって生態や形態に幅があると実感しました。

           (2021.10.9 神奈川県)

○野生植物写真館「ウンラン」
「表紙によせて」バックナンバー