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表紙によせて

 房総半島は、植物についてみると不思議なエリアで、黒潮に洗われる温暖な気候のせいか、伊豆諸島と共通するオオシマシュスランや、南方系のサツマイナモリが遠く離れて分布することが知られており、ほかにも固有種のアワチドリなど、特徴的な植物分布が見られます。

 ダイモンジソウの変種であるイズノシマダイモンジソウもこうしたものの1つで、名前のとおり、伊豆諸島が分布の本場なのですが、東京湾をはさんでならぶ房総半島と三浦半島からも知られています。三浦半島では近年、見当たらなくなっていますが、房総半島では数が多く、山あいの道路沿いの崖地でも見ることができます。

 房総半島はかつて、太平洋プレートが日本列島側のプレートにぶつかり、海溝にもぐりこむときに、太平洋プレートからはぎ取られた海底の堆積物が隆起してできたものだそうです。植物までもが運ばれてきたわけではないのですが、海の向こうの島々と共通する植物の由来がどのようなものなのか、想像はつきません。

 イズノシマダイモンジソウは母種にくらべ、大型の株が多く、1つの株につける花の数も多いような印象を受けます。これもまた、南国にルーツを持つ植物の特徴なのかもしれません。
          (2016.11.3 千葉県君津市)

「イズノシマダイモンジソウ」
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