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表紙によせて

 ザゼンソウを観察すると、小さな花が集まった花序は、「仏炎苞」と呼ばれる、葉が変化した1枚の苞に包まれているのがわかります。この苞はミズバショウなどにくらべると肉厚で、断熱効果もありそうですが、それだけではありません。おどろくべきことにザゼンソウでは花そのものが熱を出してまわりの雪を融かして生長するのです。

 どのようにして発熱するのか、くわしくは明らかになっていませんが、他の花からの花粉がつかないと種子ができないザゼンソウは、まっさきに花を開くことで花粉を運ぶ昆虫を独占するメリットがあります。おまけに、英名の「スカンクキャベツ」の由来にもなったくさいにおいまで出し、あの手この手で昆虫を引き寄せているのです。

 群馬県内のザゼンソウは、雪の多い尾瀬ヶ原では開花が5月下旬になりますが、赤城山麓の群生地では1月にはもう花が見られます。ごくまれに苞の紫褐色の色素がぬけた突然変異が見られ、その色からアオザゼンソウと呼ばれています。この年は2月の大雪で、訪問が1ヶ月も遅れてしまいましたが、ザゼンソウとともに咲くアオザゼンソウを見ることができました。

          (2014.3.9 群馬県前橋市)

○野生植物写真館「アオザゼンソウ」
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